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【講師の海外公演レポート】ウィーン公演便り〜シューベルトの面影を追いかけて〜

  • crecerpiano
  • 2 日前
  • 読了時間: 6分

みなさん、こんにちは!

江東区大島(西大島駅徒歩3分)のCRECER Piano Lessonsです。

月曜日の講師を担当いただいている、ピアニスト竹内麻優先生のウィーン公演をレポートいたします。

私たちは海外や国内で研鑽を積み、演奏活動を並行されている講師から直接レッスンを受けられる環境を整え、お子様から大人の方までレッスンをしております。

ぜひ、自身もピアニストとして、また後進を指導する立場として成長し続ける講師の活躍をご覧ください!!


この度、10月から11月にかけて、オーストリア・ウィーンにて演奏してまいりました。


芸術文化の中心地であり、音楽家にとって憧憬の地であるウィーン。その深く艶やかな歴史は、芸術に対する限りない誇りと厳しさを保っています。


この特別な場所で、この秋2度のリサイタルを叶えてくださった現地の方々。そして、日頃より温かいご支援を賜りますサポーターの皆様や、送り出してくださるお教室の先生、生徒様をはじめとしたすべての皆様に、まずは心より感謝申し上げます。


今回のツアープログラムのメインは、ウィーンに縁の深い作曲家「シューベルト」の作品でした。彼の生きた地での演奏は、緊張感と責任を伴う、身の引き締まる経験です。しかし、それ以上に、日頃より共に研究の道を歩む演奏家の方々の助言や存在、各地のリサイタルで聴いてくださっている方々、そして何よりも「シューベルト」の存在そのものが、この旅に尽きない楽しみと意欲を持たせてくれました。


1公演目は10月末、ウィーン6区に位置する歴史あるサロンにて。この場所は、シューベルトの最期の家からわずか800mほどの場所にあります。その立地条件も大きな役を持ち、素晴らしい管理をされたBechstein(ベヒシュタイン )の楽器と、温かなお客さまに見守られながら、演奏中、ふとシューベルトの面影を感じる瞬間を得ました。


ずっともがいてきたからこそ、もし(その幻覚が)気のせいであったとしても、それは大変嬉しく、幸せな瞬間でした。

1公演目を終えて
1公演目を終えて


続くは11月、ウィーン市の中心となる1区、楽友協会の建物内に位置するサロンにて、今回2度目のリサイタルです。


公演前は特に体調/精神管理に気を配ります。そのようななか、今回は「2公演目のほうが難しいのでは」と感じる準備期間でした。なぜなら、1公演目で良かったと思える部分に固執することがあれば、それは退化のはじまりだからです。満足の気持ちに近づくことなく、常に再構築すること。練習を重ねた上で、舞台上では自由に、実験をするつもりで本番に臨みました。


楽器はこちらも名器であるBösendorfer (ベーゼンドルファー)、事前に4台のピアノから選定を行いました。Bösendorfer の特徴として、楽器の個体それぞれの個性が強い、という点が挙げられると思います。これは素晴らしいことで、今回も作品のメッセージをより伝えられる楽器はどれなのか、という面に重きを置き、3時間をかけてじっくりと選びました。


練習室への道中にシューベルト最期の家
練習室への道中にシューベルト最期の家

いよいよ本番。まずお客さまにプログラムへの想いをお話ししてから、演奏に入ります。初めてお聴きくださる方がほとんどの会場でしたが、演奏が進んでいくにつれ、会場全体の集中力が増していく様子を感じ、私の意識も少しずつフロー状態へと近づいていきました。弾きながら、つい「もっと自由になりたい」「勉強したい」と思考してしまう瞬間もありましたが・・・作品の旅を終えた瞬間、気づけば満席を超えるお客様から温かな拍手と声援をいただき、我に帰るようでした。


皆さまの心から溢れるように伝えてくださった感激のお言葉の数々や、新たな舞台へも繋がったこと。会場全体が作品の方向を共に向き、共に旅をしてくださった。そう感じられたことに、大きな幸せを覚えています。


生涯をかけた追求という幸せと、その日々に大きなパワーを授けてくださるお客さまの声。


演奏家とは、作品の真髄を追い求めるなか、聴いてくださる方々の真摯な心によって、その命を生かしていただいているのだと改めて感じる両公演でした。


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さて、ここからは余談ですが、今回の滞在で意識していたことがあります。それは、外に出ること。


つい、練習室に籠りたくなります。しかし、建物から出てウィーン訛りのドイツ語を聴き、風の音と香りを身体に通わせ、作品の影を探すこと。その時間が如何に重要なのか、私もようやく考えるようになりました。


今回は、シューベルトが住んだ場所、歩いたであろう場所ー現在は変貌を遂げた場所もー時間の許す限り歩いてみました。


・・・ひしめく自動車や建物、流行のファッションや街の音・・・当時は無かったものが、現代にはたくさんあります。それは逆も然り。現代には無くなったものが、当時はあったのでしょう。そんな変化を想像しながらも、


「シューベルトさん、あなたは何を考えていたのですか。」

そう呟き散歩する時間は、紛れもなく、かけがえのない時間です。


そしてもうひとつ、ウィーンの「秋」の香りも印象深く残りました。


私の留学生活を送ったドイツ北部・ハンブルク(C. P. E. バッハやブラームスの生まれ故郷)では、10月や11月は灰色の世界。冷たい雨と風が吹きつけ、濡れた落ち葉の上を歩く。実に芸術的でありながらも、つい固くなる心を知り、クリスマスの街の灯りを待つ。そんな季節だと感じていました。


しかし、今回ウィーンで覚えたのは、日常の中心から「芸術や文化の温もり」を手放さない秋の様子でした。(短期滞在のため信憑性は薄いですが。)


市内では、ウィーンフィルをはじめとした音楽会シーズンが再開し、11月頃から年明けにかけてたくさんの「舞踏会」が開催されます。歴史あるパティスリーからは期間限定の「栗スイーツ」も登場!


心を動かすことをやめない姿と、欧州北部と比較すると明るい(日本と比較すると乾いた)気候。この地域性が「ウィンナーワルツ」や、逆説的ながらもハプスブルク家の繁栄にさえも影響を与えたのではないか、なんて想像を膨らませる時間でした。


各地の気候や生活習慣、言語、たどってきた歴史に密する独自の色彩。これを垣間見ては、新たな想像と限りない無知を感じることができるのも、演奏旅行の醍醐味です。


地道に勉強を続ければ、いつか少しずつ嬉しいことが起きる。それを実感することが時々あります。今回の旅もそのひとつになりました。たくさんの感謝とともに!


今後も歩き続けるとともに、レッスンにおきましても、生徒の皆様にとって音楽が心の機微を肯定する存在のひとつとなり得るように・・・寄り添うことができましたらと思います。


シューベルトが少年時代に聖歌隊活動を行った宮殿
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楽友協会でウィーンフィルやトーンキュンストラーを聴く・・・立ち見席は6ユーロというやさしさ
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